腕はアン・ナヴァンとアン・オーらしき位置、写っていないけど足は気持ちデュヴァン気味(用語はたぶんでたらめ)。
それで知ったのだが、世間にはお子さま向けバレエ雑誌というものがある。娘(5歳)にせがまれた妻が、何冊か買い込んできた。ひらいてみれば、すみからすみまで未知の世界である。「未知の業界用語」フェチの気がある僕にとっては、コントゥルタン、ドゥミ・プリエ、タン・ドゥ・ポアソンなどという、実に発語しがいのある言葉たちの宝庫だ。36歳男の社会生活では、ふと口にする機会すらなさそうだが。
雑誌には、バレエ教室を舞台にしたイラスト付きの物語が連載されている。
登場人物は、ウサギやネコからブタやクマに至るまで、寸づまりなアニマル・キャラ顔のくせに、顔から下はスリムなバレリーナ体型という、子供向けバレエ雑誌ならではのフリークさを呈している。
娘は、枕元でそれを読め、と父に言う。父でなければダメだ、と言う。そこで、「はやくトウシューズをはきたい!」「このポックリえくぼがかわいいから、ミルクさんって、好き~」「だめだめ。みんなの前で泣くなんてぜったいダメ!」などと、我ながらどの面を下げて言うのかというようなウサギの少女の独白を読み上げても、小娘は、何の疑問もなく、いかにもこの年頃らしい生真面目さで物語に入り込んでいる。